野球少年と私
「もう一度、自分の気持ちと よく向き合ってみて…?」
『……』
雫は一言そう言うと、立ち上がって行ってしまった。
だんだんと遠ざかる雫の後ろ姿を見つめる。
『(…自分の気持ち?)』
頭が整理出来ないまま、
私は自分の家へと足を運んだ。
竹本side
何だよ
何だよ、
滝口も美希が好きだったのか?
俺は公園を出て、家への道のりを歩く。
そーいやアイツら公園で二人きりだな…
なんか滝口に負けた気分。
滝口…今ごろ美希に告白してるのかもな。
もし そうだったら美希は断るのか?
いや、滝口モテるし…。
そんな事を考えながらも家に着いた。
「ん…?あそこに居るのは…
…雫?」
ふと、住宅街の片隅にうずくまって座っている
雫らしき人が見えた。
泣いてる──…?
いつもの俺なら すぐに声をかけると思うが、今は そんな気分じゃない。
「(わりー雫。今の俺は美希の事で頭がいっぱいなんだ…)」
少し罪悪感を心に残し、
俺は家の中へと入った。