記憶の中で… 2
「桂木さん、どうしたの?落ち着いて。大声は駄目よ。他の患者さんがびっくりしちゃう。
ゆっくり深呼吸してみて。うん。そうそう。上手にできてるよ。
お腹の傷は痛まない?せっかく塞がった傷が、また開いちゃうよ。
もう、大丈夫?お母さんと話して来るからちょっと待っててね。」
私の体を離すと、看護師さんはお母さんと病室を出た。
それから私はお母さんとろくに口を利かなくなった。
そして私の心の中には一つの決心が生まれた。
『私がナツキのところへ行く。』
お母さんが一緒に住めないなら、私がナツキのところへ行けばいい。ナツキのお母さんならきっと受け入れてくれるよね…?
この時の私はナツキを想うあまり、根本的に間違った考えをしていた。
なぜナツキが一緒に暮らすようになったのかを…。
それは通学が大変だからという理由だけだった筈。
それを後で気づく事になった。