記憶の中で… 2
「ユキちゃんがナツキを責めないでくれ、と言ってくれて嬉しいわ。
でもね、いくらナツキの母とは言え、その前に女よ。
体にどれだけ負担がかかるのか分かってるわ。
あの子は本当に分かっているのかと思うと…。
ドイツは日本より性教育が盛んだと聞くのに、何を勉強したのかしらね。
元々貴女のお家にお世話になったのだって、通学が大変だったからでしょう。
なのに、その恩を忘れてしまうなんて情けない。
それに、学校をやめたのは誰のせいでもないのよ。
あの子は自分で言ったの。『日本で勉強するのは無理だ。』て。
漢字が分からないのだもの。仕方がないわ。
それよりは海外に行って、『自分に何ができるのか探してくる』と置き手紙をして、皆が寝てる間に出て行った。
だからあの子がいつ出て行ったのか、どこへ行ったのかも、誰も知らないの。
行方不明になって、見つかったと思ったら、また行方不明なんて…。親不孝もいいところよ。」