ラヴァーズ
彼女の母親が、看護師の隣に座った。

あのあと、親戚の許可なしに話のは憚られる、という病院が、わざわざ雪夢の母親を呼んでくれた。雪夢とは似ていない、でも相変わらず綺麗な人だった。着飾った綺麗ではない。雰囲気が、爽やかな女性だった。

「久しぶり、だね。冬威くん」

看護師がでは、これで、と俺たちに頭を下げて去っていく。水田さんではない人だ。

「………ごめんな、…君の母さんには、引っ越しした理由もちゃんと言ってあるんだ。ただ、………冬威くんにとってあの子がどれだけ大切か、おばさん、わかってたつもりだった。だから、」

「母に口封じしたんですか」

「…あぁ、………ごめん。でも、雪夢のためにここまで来てくれたんだ、すべて話そうと思う」

場違いながら、やはりこの人は男みたいな口調だと思った。なにも、かわらないのに、雪夢だけが、かわってしまった。

華月はこそっと「席外そうか?」と聞いてきた。それはおばさんにも聞こえていたらしく、「いてくれないか。できれば……雪夢の友達に、なってやってほしいから…」と、哀しそうに笑った。

「……原因も、…治療法もわかってないんだ…」






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