ラヴァーズ
「……雪夢だ…」

声が擦れた。

「…そう」

「その病院はどこだ?」

「ここからは、かなり遠いわ。しかも田舎だから、交通手段があまりないのよ?」

オレは、それがどうした、という風に華月をみやった。

「……」

華月は悲しそうに顔を歪めて、すぐに呆れたようにため息を吐いた。

「…なら、つれていってあげるわ。母になんとか言ってみる」

「住所を言ってくれたらいいんだが…」

何を言っているの、というように華月は顔をしかめた。

「あたしもついていくわよ」

「…………はぁ?」

「むかつくじゃない」

「なにが」

「アンタのその態度、まるで反省してないわね」

「なにに反省すんだよ」

あっきれた、と言い放つ華月。

「なにが」

「……ほんと、あんた…」

呆れて本当に声が出ないといった風に華月はうなだれた。

「顔に騙されたあたしもバカだったわ」

「それはそれは」

「……明日、用意しときなさいよ」

「…………ありがとうな」

「……なにがよ」

「こうやって、教えてくれて」

「……ふん」

別に、ただ、あたしみたいな子が、もう出ないようにしたかっただけよ。

そんなことを華月が考えているなんて、知る由もなかった。

オレが、どれだけ彼女や過去にオレを好きだといってくれた女を傷つけていたかなんて、わかってなかった。

そして、雪夢を傷つけたのも、オレなんだ。






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