ラヴァーズ
「遅い、華月」

イライラと顔を歪ませた冬威にごめん、と謝る華月。

「じゃ、いこっか」

「あぁ」

壁にもたれ掛かっていた冬威が歩き始めて、華月はそれを追い掛けた。

こうして冬威とどこかへ行くことに、多少なりとも浮かれてしまうのは仕方がないことだと、華月は言い聞かせた。

まず、冬威はデートに誘ってくれなかったし、手も繋いでくれなかった。華月からデートに誘っても始終うわの空で全然楽しくなかった。それでも傍にいてくれたらよかった。だんだん華月を見てくれるようになると信じていた。

「…冬威は、どうして、雪夢ちゃんを追い掛けてるの?」

電車を待つ間、華月は冬威に話を聞く。

冬威が、ゆっくりと話しはじめた。やさしく、穏やかな話し方で、華月は切なくなった。

「……あいつ、雪夢は、オレの大切な奴だから」

「…好きなの?」

「なにいってんだ、愛してるんだよ」

華月は総毛だった。

それは、高校三年生が言うには重すぎる言葉だと思ったからだ。それでも、冬威は本気だと思った。だからこそ、鳥肌がたったのだ。

冬威は、ほんきで雪夢を愛しているのだと。

「じゃあ、どうして告白されたら女と付き合ったりするの?」

「…どうして、だろうな」

もしかすると、雪夢と重ねていたのかもしれない。

そうつぶやく冬威。華月は何だか遣る瀬ない気分になってきた。

そんなに冬威に愛されてるのに、どうして雪夢は姿を消したのだろう。





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