君の花嫁
男性は私の前まで来ると礼儀正しく一礼をした。
「私は風間と申します。社長からお世話を申し遣っております。お出迎えが遅くなり申し訳ありません」
風間さんは丁寧に頭をさげた。
それに慌てたのは私だ。家までの迎えを断ったのはこっちだし、大人の男性に頭を下げられるのは気持ちが良くない。
「あ、いえ、私が早く着すぎてしまったんで!こちらこそすみません。あの、えっと綾川真琴です。宜しくお願いします」
私も挨拶をしてペコリと頭を下げる。
年上の人にそんな丁寧に挨拶されるなんて初めてだから戸惑ってしまう。
しかしそれでも風間さんはホッとしたように微笑む。
そして伊織にも向き合った。
「伊織様もお帰りなさいませ」
「ただいま」
伊織はそう言ってさっさと家の中に行ってしまった。
その背中を目で追いかける。
そっけないよね、態度がさ。
仕方ないかもしれないけども。
もう少し何かしらあってもいいのに、なんて思ってしまう。