君の花嫁
「突然の事で真琴にはすまなかったと思う」
「これはどういうことなの? 説明してくれなきゃわからない!」
「説明するから」
怒る私とは反対に父は落ち着いている。
むしろ、それはなんだか諦めのようなものだったのかもしれない。
「私の名前でなんで婚姻届があるの!?しかもっ」
しかも隣に書いてある名前、“雨宮伊織”って誰!?
私の声には出さない思考を読み取ったように父は言った。
「そこにいる彼が雨宮伊織君。真琴と同い年だよ」
先程から一言も喋らない目の前の男の子。
黙ってこの状況を眺めている彼が、婚姻届に書いてある雨宮伊織だという。
無表情な整った顔を私に向けており、彼を見た私と目が合った。
まじまじと見ると、ちょっとカッコイイ。
いや、かなりカッコイイ……。
けど。
混乱と興奮のあまり、すっかりその存在を忘れてた。
そして、父は衝撃的な言葉を口にする。
「真琴。何も言わずに伊織君と結婚してくれ」
…………。
「言うに決まってんでしょうっ!!!」