キミという存在。



「重いなら素直に言えよ」
「……」
何も言い返せず私はただ下を向いて涙をこらえる。
「女なんだからそういう重い物持つ仕事は男に任せときゃぁ良いんだよ」
そう言って咲哉は私に手を出す。


「えっ…?」
そう言って私は今にも泣きそうな顔を少し顔を上げて咲哉を見る。
「持ってやるよ」
「……」
少し黙ってしまったが、私はペンキが入っている袋を咲哉に渡して、
「ぉ…お願いします…」
咲哉との目線をはずして小声で言った。
「素直にそ―言やぁ良いんだよ」
咲哉は少し笑いながら、ペンキの袋を片手で軽々と持ち上げて、歩き出す。



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