朝が待てなくて
真っ赤になって首を横に振るわたしを見て
あ、違うの? なんて彼は体勢を元に戻した。
は? 違うに決まってる!
いくらなんでもこんなタイミングでトイレになんて行かないし
しかも、もし行きたかったとしても、いちいち樹に相談なんかしないもん…!
どんだけ子供だと思われてるんだ、と愕然として力が抜けた。
そんなわたしを取り残して、場内は映画の世界に感動中。
スクリーンの中の恋人たちは、家庭も仕事も地位も名誉も財産も、全部捨てて二人で生きて行くことに決めたみたい。
『世界中を敵に回しても君を守る――』
見渡すとハンカチで目元を抑える女子多数…
ところどころで洟をすする音まで聞こえた。