朝が待てなくて
胸に棲む人
それからしばらく他愛のない話をして
店を出るとき
「あの…ごちそうさま」って言ったら、彼は
「お」って軽くうなずいた。
樹は今夜から長距離の仕事が入っているそうで、わたしたちはそのまま帰ることになった。
待ち合わせした駅まで並んで歩く。
訊いたら彼の最寄り駅は、何とわたしの学校がある駅だったんだよ。
「そこ、うちの高校の駅だし!」
「うん、知ってる」
と彼は言った。
ひと駅だけ一緒に乗ったら次の駅でわたしは乗り換えなきゃならない。
樹はそのまま乗っていくんだけどね。
電車に乗り込む直前――
「まだ美里さんのこと、好き?」
ずっと心に引っかかっていたことを声にした。