朝が待てなくて
瞳の奥
樹の運転で車は静かに滑り出す。
「混むから、あんま遠くへは行けないけどな」
海方面を避けて山手の方へと向かうらしい。
運転する樹の横顔を独占できるのが単純にうれしくて、自然と顔がほころんじゃった。
「真琴がうれしそうだとホッとするよ」
何でわかるのか、フロントガラスの向こうを見つめながら樹が笑った。
「イズ高っていうんだろ? 真琴の学校」
しばらく走ってから、唐突に彼が言った。
「うん、泉が丘高校」
「うちの会社から近いんだって言ったっけ?」
「あ、そうだった。…どの辺?」
樹が説明してくれた彼の勤務する運送会社の所在地は、学校から徒歩10分ってとこだった。
「俺は地元じゃないから知らねーけど、結構頭いい高校だって、社長が言ってたぜ」
「えー、普通だよ。中の上くらい」