朝が待てなくて

「真琴」


「ん?」


「ゴメンな…」


驚いて見上げると、樹はいつも通りの明るい眼をしてニコッと笑ってくれた。




「何が?」


「財布の心配までさせて」


そう答えながら、彼はもう前を向いて歩いていく。
何事もなかったみたいに。




…やっぱバレてた。


樹お金、ちゃんと持っていたのに


たぶん今日のために節約して、じゅうぶんすぎるくらい準備していてくれたのに


ゴメン、なんて言わせちゃったんだ。




会えない間、樹だって今日のプランをいろいろ考えてくれていたのに。


おいしいごちそうを食べて喜ぶところとか
プレゼントもらってうれしそうな顔とか


そんなわたしを見たいと思ってくれていた?




なのにわたしってば自分の考えばっか押しつけて


きっと樹のプライドを傷つけた――



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