朝が待てなくて
シャンプーのコマーシャルみたいにつややかなロングヘアーが、ふわっと広がりストッとおさまる。
上品で、美しくあでやかな笑顔――
マジで女優さんみたい。
「わー、きれいな人!」
そう声を上げたのは、わたしではなく向こうだった。
「うん」
なんて樹がまた間抜けな返事をする。
自慢じゃないけど“可愛い”は言われても“きれい”だなんて言われたことは一度もないよ。
それでもちっとも嫌味じゃなく、その人は本当に嬉しそうに笑ったんだ。
「よかったぁ、幸せそうで」って。
樹の視線がゆっくりと、でも真っ直ぐにその人をとらえる。
「…お前は?」
「え?」
「幸せなのか?」