朝が待てなくて
その声も、振り向いたときの顔も、樹は、怒っているのが一発でわかるような表情をしていた。
「ふざけるな」
低い声。
「だって……」
無条件でうろたえる。
だって樹がわたしに本気で怒ったのは、たぶん初めて。
声を荒らげたことなんて一度もなかったもん。
いや、今も荒らげているわけではないんだけど……。
「俺がこんな思いして働いてんのは、美里のためだって言うのか?」
樹はすごく恐い顔をしてそう言った。
こんな思い……って。
キツイってことだよね。
信号が青に変わって、車はまた走り出す。
そっと横をうかがうと、樹はギュッと前をにらみつけたままハンドルを握っていた。