朝が待てなくて

ゴメンね、樹。起こしちゃったー?


なるべく明るくそう訊こうとしたとき、かすれたその声が、吐息のようにささやいた。




「ミサ……?」




え……。


ドクン、と本物の痛みをともなって、わたしの心臓が大きく音を立てた。






それから先のことはあまり覚えていない。


思わず電話を切って

ケータイを放り投げて

ベッドにもぐって

枕を抱きしめて

それに顔をギュウッと押しあてて

声を殺して……


小さく小さくまるまった。




あとの思考は現実なのか夢の中なのか、もうわからない……。


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