朝が待てなくて
「あいつの事情、真琴にも話したよな?」
優しくないわたしをとがめるように、重い口調で樹は言った。
は?
「……だから認めろって言うの? わたしより美里さんを優先させるって意味? 名前間違えられても文句言ったらいけないの?」
「そうは言ってない」
樹の声も硬くなる。
そのとき、ケータイの向こうから怒鳴り声が聞こえてきた。
『おい、ドライバー、早くしろよ』って。
「もう切るぞ、仕事だし」
わたしの返事を待たずに、ブチッと電話が切れた。
何それ?
ゴメン、は?
なんでわたしが怒られてんの?
いつのまにかわたしは通学路の端っこで、ポロポロと涙をこぼしながら立ち尽くしていたんだ。