朝が待てなくて

「ま、まだ捨てられてないよ?」


あわててそう告げたら、大淀はこっちを見て、プ、と笑った。


左手は大淀にギュッと握られ、右手には肩からずり落ちたカバンを持っているから、涙がふけずにいる。


う……涙と鼻水とで悲惨なことになっている顔を、まともに見られた。




そっと手を離し、彼はポケットティッシュを目の前に差し出してくれる。


「ありがと」


ティッシュで涙をふき、チーンと鼻をかんだ。




「トラック野郎に泣かされたの?」


大淀の問いに思わずコクンとうなずいた。


「シメてやろうか?」


「プフ、大淀のほうが弱いよ、きっと」


「あ~、やっぱし?」


なんて笑う。


< 403 / 771 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop