朝が待てなくて

それからちょっとビックリしたんだけど、大淀はまたわたしの手をとって歩き出した。




大淀の手は樹よりも小さくて細くて柔らかい。


でもわたしの手よりか、ちゃんとでかくて……。


その手の感触とレアな笑顔とで、心が次第に軽くなってくる。




この人学校ではちょっと有名人だから、こうして通学路を手をつないで…ってゆーか、手を引かれて歩いてると、かなり目立つんだ。


ちらちらと視線を感じて、大淀に訊いてみる。


「手つないでると勘違いされちゃうけど…?」


「いーよ」


何でもないことのように彼は即答した。




「あの……ありがとう」


こっちから手を離そうとしなかった自分自身にも、実は驚いていた。




結局ゲタ箱の前まで、わたしたちは並んで歩いて登校したんだよ。


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