朝が待てなくて
「じゃ、俺たち泳いでくるから、眠いんなら寝とけば?」
会話を打ち切り、樹を見下ろしてそう言い捨てると、大淀はわたしの手をグイグイ引っ張って、海の方へと歩き出した。
「ちょっ、ちょっと大淀……! 離してったら」
抗議しても、彼は構わず歩き続ける。
そうして、もうすぐ波打ち際というところで足を止め、彼はわたしの顔を見た。
「お前のためだって、わかんないの?」
「へ?」
「いつまでもナメられてんなよ」
真っ直ぐにそう言うと、大淀はやっと手を離してくれた。
「自分の彼女がこんなふうに連れてかれたら、普通は追っかけてくるぞ」
振り返ると、シートにゴロッと横になっている樹が見えた。