朝が待てなくて

「あ、うん……」


樹はフロントガラスの向こうを真っ直ぐに見ている。


「俺が今までこうしてちゃんとやって来れたのも、
毎日楽しく過ごせてんのも、全部真琴のおかげだって、

俺、ちゃーんとわかってるから」




信号で止まって、こっちを振り向いたとき、樹の瞳に映ったライトがちらりと揺れた。




「どうして急にそんなこと言うの?」


「え、お前が不安そうな顔するからだろ」




ちがうよ、樹。


不安そうなのは樹だよ?


さっき美里さんを抱きしめたとき
どんな気持ちがしたの?




電気が走った?


体の中の熱いものがよみがえった?


心が、どっかへ飛んでっちゃいそうだった?


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