朝が待てなくて
「こいつはやっぱりバカなんだよ」
隣で祐二さんがぽつりと言った。
「仕事ゆずってもらった俺が言えた義理じゃねーけどさ」
それから祐二さんはひざのところでギュッと両手を組む。
「樹はいつも他人の苦労まで背負い込んでる。なんの得にもなんねーのにさ」
命がけで見知らぬ人を救ったり
祐二さんの代わりに仕事を辞めちゃったり
他人の借金をかぶったり……。
「だからな、まこっちゃん。こいつといたら一生苦労が絶えないと思うよ」
なんて祐二さんは言う。
「だけど俺、こいつのためならひと肌もふた肌も脱ぐってやつ、何人も知ってるから。バカでお人好しで優しくて強くて……そんな樹のためなら何でもするってやつ、いっぱい知ってるから」
そう言った祐二さんの声がかすかに震えていた。