朝が待てなくて
「だから頼むよ、まこっちゃん。あいつと一緒にいてやって。樹を……見捨てないでやってよ」
並んで座ったパイプ椅子で、ひざにこすりつけるように頭を下げた祐二さんのすすり泣く声が、静かな病室に吸い込まれていく。
「うん」
わかってるよ。
お金もなければ職もない、いい年して何にもねーなぁ、なんて樹は言うけど、
彼が胸の中に、本当はたくさんのものを持っていることをわたしは知っている。
形にならないものや
うまく言葉にはできないもの。
そしてそれをわかってくれている人、仲間。
樹が持ってるそういうものたちは全部、
欲しいからと、どんなに手を伸ばしたって、
簡単には手に入らない……。
いくらお金を積んだって決して買えないものを
樹はいっぱい持ってるんだ。
わたしはそんな樹とずっとずっと一緒にいたい。
そうして自分の中にも少しずつ、大切なものを育んでいきたいよ。