朝が待てなくて

「樹に告っちゃった」


「えっ?」


「しかも2回」


そんな……。




「即答で断られちゃったけどね、2回とも」


と美里さんは言った。



え……樹が?




美里さんは前を向いて運転しながら言葉を続ける。


美しい横顔。
つややかな黒髪がとってもキレイ。




「元ダンナのことで相談にのってもらって間もない頃、『もう一度戻りたいよ』って告げたら、

『ゴメン、泣かせたくない子がいるんだ』
って言われちゃった。

『この前ハンバーグ屋さんで一緒だった人?』
って訊くと、樹はコクンとうなずいて

『その子のこと、大切過ぎてどうしたらいいかわかんないんだ』なんてボソッと言うのよ。


普通言うかな? 振った相手にそんなこと」



そう言って美里さんはクスクスと笑った。


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