ありふれた恋を。

そんなことを考えていたらすぐに放課後になっていて、今私は職員室の前にいる。

深呼吸をして、前髪を整えて、制服も整えて、いざ先生の元へ。



『おわっ!』

「わっ!」


と思ったら、突然ドアが開いて担任の笠井(カサイ)先生が出てきた。

笠井先生もドアを開けたら私が突っ立っていたもんだから、大声を出して驚いている。



『なんだよ有佐。こんなとこで何してるんだ?』

「す、すいません。滝本先生に…」

『滝本先生なら、今いないけど。』


…いない?



『何か用か?…って、あれか!宿題の!』

「えっ?」

『滝本先生が驚いてたよ。まぁ確かに有佐にしては珍しいミスだな。』


笠井先生まで話が行っていたなんてと唖然とする私をよそに、笠井先生は『まぁ心配するな~』と言いながら行ってしまった。

心配するな~って言われてもなぁ…先生にバカだって思われたよね。



『あ、有佐。』


一人で項垂れていると、笠井先生が何かを思い出したように引き返してきた。



「なんですか…。」

『ちょっと、そう落ち込むなって!良いこと教えてやるから。』


良いこと…?


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