ありふれた恋を。
『一緒にお弁当食べよって言われたから、最近はずっと有佐と食べてるって答えちゃったけど良かった?』
「うん、大丈夫だけど…」
伊吹くんからそう聞いていたのなら、今日だって一緒に食べることを知っていたはずだ。
それでもまた私に声をかけてきた。
「やっぱり私何かしたのかな。」
そこまでして、私を誘う理由はなんだろう。
去年も今年も同じクラスではなかった。
いつも彩ちゃんが一緒にいる派手なグループとも接点は全くない。
『有佐って、弘人先生とよく話したりする?』
「え?」
話の流れと関係なく突然出てきた名前に心臓が跳ねる。
今も私は、その名前をサラっと聞き流すことができない。
「どうして?」
『あいつさ、弘人先生と仲良くしてる女子見つけては声かけてるらしいからさ。』
「え…?」
思いの外、戸惑いがそのまま声となって出てしまった。
その戸惑いを悟られないように、必死で動揺を押し隠す。