ありふれた恋を。
完璧教師の決意。
【hiroto side】
昼休み恒例のサッカーに伊吹が参加しなくなったのは半月程前からだ。
最初はとくに気に留めなかった。
俺は毎日参加しているわけではないし、俺がいないときにはいつも通り参加しているだろうと思っていたからだ。
『なぁ、最近伊吹来ねぇよな。』
ボールを回しながら、1人の男子生徒が問いかける。
その言葉で俺がいない日も伊吹が参加していないことを知る。
『そりゃあ彼女ができたらしゃーないだろ。』
『えぇ?あいつ彼女できたん!?』
場のテンションが一気に上がるのが分かった。
この年代の男子にとっては彼女がいるいないの話題はとても大きいのだろう。
回していたボールを止めて話し出す。
『で、相手誰?』
『伊吹と同じクラスの…ほら、誰だっけ。有佐?』
「え?」
声が出たのは完全に無意識だった。
有佐。
その名前に反応しないように心がけていても、話の流れ上スルーすることができなかった自分が情けない。