ありふれた恋を。
「有佐。俺と、付き合おう。」
『え…?』
まっすぐに有佐の目を見る。
この想いが本気だと、しっかり伝わるように。
「伊吹とどっちかにしろって言われたんだろ?倉島に。」
『はい…。』
「だから、俺にしろ。」
不安定な気持ちを抱えたままでいれば、俺の知らないところで有佐を傷付けるだけだ。
だけど、恋人という立場を明確にすることで有佐を守ることができるなら…
教師と生徒という関係を壊してしまおうと、俺の中に強い気持ちが湧いていた。
『先生…。』
信じられないという様子の有佐は、みるみるうちに瞳に涙を溜めていく。
『でも先生…本当に良いんですか?
私、先生にフラれてからいろいろ考えたんです。生徒なんかと付き合ったら、先生は先生でいられなくなるかもしれないのに…。』
また、俺の為に泣いている。
あの日から、俺の知らないところで何度泣いたのだろうか。
「俺のことは気にしなくて良いって言ってるだろ。」
そっと頭に手を置くと、有佐はその泣き顔を隠すように俺の胸に頭を預けた。