ありふれた恋を。
『私、先生のこと全然考えられてなかった。自分の気持ちばっか考えて、それが先生の為になるんじゃないかなんて思って…結局先生に迷惑かけただけだった。』
泣きながら必死に話す有佐を、もういいからという想いを込めて抱き締める。
そんなことをずっと思い悩んでいたのか。
「迷惑なんかじゃない。有佐の気持ちは素直に嬉しかった。だからもう気にするな。」
これからは、そんな有佐の想いも全て受け止めていきたい。
1度断わっておきながら身勝手だと分かっている。
それでも、有佐の素直な想いを、まっすぐな好意を跳ね返すことはもうできなかった。
『先生…。』
その想いが通じたのか、初めて有佐の腕が俺の背中をギュッと抱き締めた。
「倉島のことは俺がなんとかするから。有佐は今まで通りで良い。」
向き合って話しながら、まだ赤い目をした有佐は不安気に頷く。
分かっている。
倉島を納得させることは簡単ではないと。