ありふれた恋を。
「俺たちが付き合ってることはもちろん内緒だ。ただの教師と生徒で通す。」
『彩ちゃん、納得するかな…。』
彩ちゃんという名前と倉島が繋がるまで若干時間がかかる。
普段の呼び方が出たのは、くつろいでいる証拠か。
そう思うと少し微笑ましかった。
「それでも仲が良いとか、好きなんじゃないかって追及されたら和哉の名前を出そう。」
『お兄ちゃん?』
「お兄ちゃんと友達だからって言えば良い。お兄ちゃんから聞いたけど彼女いるらしいよとでも言っておけばさすがに信じるだろう。」
今有佐が彼女になったのだから、嘘はついていない。
それで倉島が納得して諦めてくれるなら…
そんなに簡単ではないかもしれないけど、それくらいあっさりと答えた方が怪しまれないだろう。
「もし倉島にまた何か言われたら、すぐに俺に報告すること。絶対1人で抱えるな。」
『うん…ありがとう先生。』
今日初めて、心から笑ってくれた。
これからはこの笑顔を独り占めできるのかと思うと、俺の頬も緩む。