ありふれた恋を。

隅っこ…隅っこ…

とりあえず2階に来たけど、隅っこってどこだ?


向こうは教室しかないし…

反対側には資料室があって、その隣に…

隣に…?

隣に、よく分からない小さな部屋がある。


そこだ!と思い、普段ほとんど利用することがない資料室を越えて廊下の“隅っこ”にある謎の部屋の前に来た。


なんだか暗くて不気味だけど…恐る恐るノックをすると中からガチャンッと派手な音がして、その後でドアが開いた。



「あっ」

『あっ』


私の声と、中から出てきた先生の声が重なる。



「本当にいた…。」


笠井先生の言ってたことは本当だったんだ。



『有佐、何でここにいるんだ?』


先生は、らしくないマヌケな声を出してから、『あっ』と呟いた。



『そうかー、そうだった。ごめん、忘れてた。』


…本当に忘れられていた。


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