ありふれた恋を。
普通生徒の一歩。
暗くなり始めた教室に1人。
フラフラとした足取りで教室に戻って来てからどれくらいの時間が経ったのだろう。
このまま帰ってしまおうかと思いながらも、先程起こった出来事が消化しきれず立ち上がることができない。
私、先生の彼女になった…?
伊吹くんの部活が終わるのを待つ為に教室に残っていた私に、彩ちゃんが声をかけてきたのはほんの数十分前のこと。
『先生か伊吹、どっちかにすれば?』
いつもの明るさはない尖った声で、何の前置きもなく突然言われた言葉の意味をすぐには飲みむことができなかった。
『先生のこと好きなくせに伊吹とつるんだりして、何がしたいの?』
『仲良くなって味方につけようと思ってたけどもう限界。』
『先生のこと見る目で分かるんだから。あんたが先生を好きなことくらい。』
『先生も同じ目であんたのこと見てるの。何かあるの?』
矢継ぎ早に飛んでくる言葉を避ける隙もなく、全てが刺さって更に言葉に詰まる。
先生を好きなことに気付かれていた動揺と、先生が同じ目で私を見ているということへの疑問。