ありふれた恋を。

まだ気持ちがふわふわとしている内に教室を出て「今日は先に帰ります」と伊吹くんにメールを送る。

今伊吹くんに会ってしまったら、何事もなかったかのように振る舞う自信がなかった。


1人で歩きながらこれからどうしようかと考える。

伊吹くんと一緒にお弁当を食べることも一緒に帰ることも、突然やめてしまうのは不自然だ。

先生と一緒にお弁当を食べるわけでもないし、先生と一緒に帰るわけでもない。


伊吹くんはクラスメイトで友達だから、2人で一緒に居たって良いのかな…。


♪♪♪〜

スマホの受信音が鳴って、伊吹くんかと思えば先生だった。


“気をつけて帰れよ”

たった一言だけ書かれた絵文字も何もない簡潔なメール。

でもそれだけで嬉しくて胸がいっぱいになる。


校舎を振り返って見たけれど、あの部屋はカーテンが閉められている。

これからの先生との日々はきっと壁だらけだ。

簡単にだって会えない。


でも大丈夫。


好きだというこの気持ちがあれば、大丈夫だと信じたい。


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