ありふれた恋を。

もしかしたら無視をされて嫌がらせを受けるのではないかと怯えたり、変な噂を流されているかもしれないと心配していたけれど、その日は至って普通の1日だった。

何もかもがいつもと変わらない時間が流れていく。


ただひとついつもと違ったのは、お昼休みに彩ちゃんが声をかけてこなかったこと。

廊下で見た彩ちゃんはいつもと変わらない様子で友達とはしゃいでいた。

昨日の話はあれで納得してくれたのだろうかと、放課後の教室で考える。


考えても答えの出ないことをただぐるぐると巡らせていると、メールの受信音で思考が途切れた。

先生だった。


『倉島から何か聞かれたか?』

たったそれだけ、その一言に心配する気持ちが込められている。

何も言われていないと返すと、先生から『俺もだよ』という返信。

彩ちゃんが沈黙しているのは私相手だけではないようだ。


そのことがやけに妙に思えて、少し怖い。


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