ありふれた恋を。

「普通妹に向かって可愛いとか言う?」

『良いだろー別に。実際夏波は可愛いんだから。』


そんなことを真顔で言うお兄ちゃんは真面目なのかお調子者なのか…よく分からないけれど、お兄ちゃんと話しているとさっきまで悩んでいたことなんて忘れてしまいそうだ。


お兄ちゃんの部屋は今日も綺麗に片付けられていた。

開けた窓から初夏の風が吹き込み、微かにカーテンを揺らす。


先生の部屋は、どんな感じなんだろう。

ソファーについたシミを見ながら、お兄ちゃんが話していた先生のイメージを思い出す。

部屋が散らかっていて、…臭う?



「ねぇお兄ちゃん。」

『うん?』


冷蔵庫から野菜を取り出して料理を始めようとしている背中に声をかける。


先生のことを聞きたかった。

なのに何から言葉にすれば良いのかが分からない。


先生と付き合い始めたことを素直に打ち明けたら、お兄ちゃんは何て言うだろう。


先生のこともよく知っているお兄ちゃんだから応援してくれるだろうなんて、私の都合の良い思い込みだろうか。


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