ありふれた恋を。
『あ、弘くんも呼ぶ?』
「え?」
そんなとき突然先生の名前が出てきて驚く。
呼ぶ?
え、今からここに?
もちろん先生に会いたい。
でもお兄ちゃんの前でどんな風に振る舞えば良いのかという不安もある。
『…って、マズイか。教師と生徒をこそこそ会わせるようなことしちゃ。』
私が答えないことを否定的に取ったようで、お兄ちゃんが肩をすくめる。
『この前偶然会ったときも後から反省したんだ。2人きりじゃないとは言え、同じ部屋で会ってたこと。』
違う。
私が言いたいのはそんなことじゃない。
本当は会いたい。
会いたいのに、今ここで“教師と生徒”として会ってしまえばお兄ちゃんに嘘をつくことになる。
それが苦しかった。
♪〜
そのとき、インターフォンが鳴った。
『あ、もしかして噂をすれば来ちゃったかな。』
私もすぐに先生が来たんじゃないかと思い、一瞬にして鼓動が高鳴る。