ありふれた恋を。

『宅配便でーす。』


だけど玄関から聞こえてきた声に脱力した。

…そんなに都合良く来たりしないよね。


鍋の中を覗いたり冷蔵庫の中を開けたりしながらお兄ちゃんが戻ってくるのを待っていたけれどなかなか戻ってこない。

宅配便でそんなに時間かかるのかなと玄関へ様子を見に行くと、そこにお兄ちゃんの姿はなく荷物だけが置かれている。



「お兄ちゃーん?」


ドアを開こうと思ったとき、外からお兄ちゃんが誰かと話す声が聞こえてきた。


ダメだって、
いいじゃん、
だからダメだって、

そんな押し問答の末にいきなりドアが開き、なだれ込んできたのはお兄ちゃんではなく先生だった。



「先生?」

『有佐…?』


先生は大きく目を見開いて驚いている。

まさか私がここに居るなんて思ってもいなかったのだろう。



『だから言ったじゃんダメだって。夏波が来てんだから。』


お兄ちゃんが頭をポリポリかきながら困ったように先生を見やる。

そして先生と私も、困ったようにお互い視線を交わした。


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