ありふれた恋を。

『そういうことか…』


先生は1人で納得したように呟き、ますます困った顔をする。



『俺分かんないからさ。先生と生徒が学校以外の場所で会ったりしていいもんなのか。だから止めたんだけど弘くん入っちゃうからさ〜どうすんのさ。』


いつも通りの明るさで言うお兄ちゃんも顔を見れば迷っていることが明白で、私と先生は言葉をなくす。



『良くはないと思う。』


妙な沈黙を破ったのははっきりとした先生の声だった。



『学校以外の場所でこんな風に生徒と会うのは、教師としては良くないと思う。でも今俺は普通の人間であって教師じゃないから。』


先生の目が、まっすぐに私を見て安心したようにそっと微笑む。



『ちょっと強引だけど、だからここで有佐と会っても良いってことにならないかな…?』

「先生…。」


交わった視線が先生の想いを伝える。

大丈夫だよ、と言ってくれている気がした。



『まぁ確かに、そう考えればいっか。』


お兄ちゃんはあまりにもあっさりとそれを受け入れて、さっさと部屋に戻って行く。


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