ありふれた恋を。

『そういえば…何でここが分かった?』


全部書き終えた私のプリントを採点し終わると、先生が思い出したように言った。

もう先生との時間も終わりだなんて大袈裟に落胆していたから、先生から会話を振ってくれたことが嬉しい。



「笠井先生が教えてくれたんです。先生なら2階の隅っこがお気に入りだって。」

『あぁ、笠井先生か。』


先生は『そっかそっか』と納得した後『ふぅ~』と大きな伸びをした。

…なんか、貴重な姿見ちゃったかも。



「ここって何の部屋なんですか?」

『さぁ。昔は使ってたみたいだけど、今は空き部屋だよ。』


部屋に置いてある棚は空っぽだし、どことなく埃っぽくて薄暗い。

まさしく空き部屋って感じだ。



「でもなんで先生が使ってるんですか?」

『誰も使ってないから。それに職員室よりも居心地良いし。』

「へぇー。」


職員室よりも居心地が良いのは、教頭先生がいないからでしょ?

という質問は言わないことにした。


私の返事を最後に、先生は黙ってしまう。


…そろそろ帰らなきゃだな。


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