ありふれた恋を。
『おい夏波!弘くんのこと頼むぞ。学校でどんな猫被ってんのか知らないけど、弘くんは1人じゃ何もできないからな!』
「お前そこまで言わなくても良いだろ。」
確かに学校ではできる男風を意識してるけど。
家事とか全然できないし和哉に頼りっぱなしだけど。
何も今有佐の前で1人じゃ何もできないとか言わなくても…
『ふふふっ』
堪えきれずに吹き出したのは有佐だった。
『前から薄々思ってたんだけど…先生どんな生活してるの?』
ケラケラと笑う有佐につられて俺も和哉も笑う。
この歳になって年下の友人から1人じゃ何もできないなんて言われて、普通なら恥でしかないんだけど。
そんな姿も有佐にだったら見せられるんだろうと言った伊吹の言葉が蘇り、本当にその通りだと思う。
「和哉。」
不意に低いトーンで名前を呼ばれた和哉と有佐が真剣な表情になって俺を見る。
「確かに俺の彼女として有佐はこれ以上ない存在だよ。」
1度有佐を見て、もう1度和哉の目をまっすぐに見る。