ありふれた恋を。
『てかいつからそんな風になってたわけ?ここで2人を会わせちゃいけないとか思ってた俺がバカみたいじゃん。』
「あぁ、ごめん。もっと早く言わなきゃとは思ってたんだけど。 」
並んでソファーに座った俺と有佐の前に、和哉は次々と料理を並べていく。
「で、これはなんだ?」
『スペイン風オムレツ。今日はバジルを入れてイタリアン風にしてみました。』
「もはやどこの国だよ。」
未知のオムレツを一口つまむとめちゃくちゃ美味かった。
まったく、仕事帰りによくこれだけ作れるもんだ。
『弘くんが居てくれれば夏波が学校で変な男に捕まる心配もないな。』
『何それ、そんなこと思ってたの?』
有佐が呆れたように呟き、和哉が運んできた料理を取り分けてくれる。
穏やかで、なんとも幸せな空間だ。
『まぁ弘くんになら安心して夏波を任せられるし、夏波になら安心して弘くんを任せられるよ。』
有佐の料理を取り分ける手と、それを食べる俺の手が止まる。
和哉の表情が、少し暗くなったように見えたからだ。