ありふれた恋を。

『俺がずっと傍に居ることで安心させてあげられるなら、まぁそれもありなのかなって。』


その表情はもう暗くなくて、和哉は前に進むことを決めたんだなと思う。



『すぐに引っ越すって言えなかったのは、なんか逃げ道残してるみたいで自分でも嫌だったんだけど…とりあえずお試し期間ってことで。』

「そうか。まぁたまには帰って来いよ。俺の飯の為にな。」

『何それ。』


有佐が笑って、和哉もつられたように笑う。

もういつもの明るい和哉だ。



『で、まぁそのことなんだけど。』


パンっと手を叩き、俺たちを交互に見る。



『契約は残すわけだし、でも俺はたぶんあんま帰って来ないだろうし…つまり、この部屋は2人で好きに使って良いよ。』

『え?』

「は?」


簡単に外では会えない俺らにとってはこの上なくありがたい提案だけど…。



「別に会おうと思えば俺の部屋でも良いんだし、何も和哉の部屋を貸してもらわなくても…」

『弘くんの部屋に、夏波を上げるつもり?』

「げ…」


2人の視線が痛い。


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