ありふれた恋を。
『つまんないよ。私の楽しみがなくなった。』
「ねぇ、どういうこと?」
彩ちゃんは広げかけていたお弁当をもう1度閉じると小さく溜め息を吐く。
『いつも一緒に居る奴らがよく言ってるんだよね。3組の有佐さん可愛いなって。』
「へ、へぇ…そうなんだ。」
話の流れが読めない入り方に言葉が詰まる。
彩ちゃんがいつも一緒に居るのは、学校内でよく目立っている派手目な男子たちだ。
『私最初分かんなくて、有佐って誰だよって。でも他の奴らは良い子だよねとか普通に答えてんの。それがなんか悔しくて気に入らなかった。』
「悔しい…?」
『名前聞いただけじゃ誰か分かんないような、そんな地味な女子の方が良いんだなって思って。』
彩ちゃんの声が少しずつ小さく、柔らかくなっていく。
『それから私はその有佐って子を探して、気にして見るようにして、なつなつに近付いた。』
突然声をかけられた日のことを思い出す。
どうして私のことなんて知ってるんだろうと思ったけど、こういう経緯があったんだ。