ありふれた恋を。

瀬川くん…瀬川くん…。

名前を辿って、彩ちゃんがいつも一緒に居る人に行き着いた。



「あっ、あのパーカーの人!」

『はっ、どんな覚え方?』


彩ちゃんは少し笑って、そうだよと呟く。

瀬川くんは制服のシャツの上にいつも大きなパーカーを着ていて、その色が赤だったり黄色だったりするからとてもよく目立っている。



『中学のときからずっと一緒でさ、私がめちゃくちゃ勉強してこの高校に来たのだって、瀬川が行くって言うからで。』


さっき言葉とは裏腹に彩ちゃんの声が柔らかく思えたのは、頭にずっと好きな人を思い浮かべていたからだったんだ。

そう思うとなんだか可愛くて、私も少し顔がほころぶ。



『なのに同じ高校入ってもずっと私はただの友達のままで、その上なつなつのこと可愛いとか言い出して…焦ったんだよね。』

「でも彩ちゃん、私には先生のことが好きだって。」


それにそのことは私だけじゃなく結構有名な話だったはずだ。



< 162 / 264 >

この作品をシェア

pagetop