ありふれた恋を。
『夏波の家も遊びに行くからね!今年も宿題は夏波とやる!』
そういえば去年の夏休みも2人で宿題をした。
来年は受験だし、皆進路も考え始めている。
こんなに何も考えていないのは私だけなのかも…と思うと少し焦る。
「あ〜いいなぁデート!ディズニー行ったらお土産買ってきてね!」
『分かってるよ〜ついでに幸せもお裾分けしちゃう!』
「ちょうだーい!」
里沙に思いっきり抱きつきながら、私だってそれなりに幸せなはずなのにと冷静に思う自分がいる。
表に出せない幸せは、お裾分けもできないらしい。
『何やってんだ?早く帰れよ。』
廊下でハグをし合う私たちに呆れたような声をかけたのは先生だった。
『もう先生邪魔しないでよね!夏波との別れを惜しんでるんだから!』
『はいはいそれは失礼しました。』
先生は大げさに謝って笑った後、不意に私に視線を向ける。
なぜかその目が少し切なげで、私は瞬間胸を掴まれた。