ありふれた恋を。

「ねぇ先生、部屋の掃除進んでないんでしょ。」

『え?いや?』


少し遅めの夕食を食べながら薄々思っていたことを聞くと、予想通りの反応が返ってきた。



「だって今日だってお兄ちゃんの部屋だし、さっきも“ここで”会えるだけでって言ってたし。」

『それは、いきなり部屋に呼ぶのは良くないと思っただけで…安心しろ。俺の部屋は順調に綺麗になってる。』


何も安心できないあやふやな口調に疑惑が確信に変わる。

…絶対何も進んでない。



「じゃあ今から見に行こ!」

『あー待って!今は!部屋干ししてるから!パンツとかあるから!』

「ははっ」


分かりやすすぎる言い訳に吹き出してしまう。

やっぱりできないなら、最初からできないって言えば良いのに。



「分かった。じゃあ明日から私が手伝う。」

『いや、でも…』

「1人でできるんですか?」

『できません。』


こうして、先生の部屋通いの日々が始まった。



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