ありふれた恋を。

だけど、先生の部屋は想像以上に手強かった。



「先生…これ何の香りですか?」


靴が脱ぎっぱなしの玄関にはスリッパも置いていなくて、リビングには服や本やその他の生活用品が乱雑に置かれている。

そして、謎の香り。

お兄ちゃんが言っていた『なんか臭う』とは違う、謎の香り。



『いや…自分じゃ気付かなくても、和哉の言う通り臭ったらいけないなと思って。デュフューザーって言うの?それ買ってアロマのやつ入れてみた。』

「だったら良い香りになるはずじゃないですか?」

『それだけじゃ不安だったから消臭スプレーも吹った。あとお部屋の芳香剤も買って来て置いた。』


あぁ、納得した。

全部違う香りを使うから、それが混ざり合ってこの謎の香りを作り出したんだ。



「ちょっと、1回外の空気吸いたい!」


急いでベランダへ出ると洗濯物が干されていて、そこには謎の色合いのTシャツが風にたなびいている。



『緑のと一緒に洗濯したらそうなった。』


いや普通に、色物は分けて洗わないとダメでしょ…。



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