ありふれた恋を。
『おぉ、減った減った。』
先生が沢山の物を思い切って処分袋に入れた結果、それだけで部屋は随分とスッキリした。
「さっきから思ってたんですけど、何で棚とか置いてないんですか?」
先生の部屋には、テレビが置いてあるテレビ台以外に本棚や収納ボックスなどが何も置かれていなかった。
だから床に本や服が積み上げられていたのだ。
『ああいうのってデカイの買うと組み立てなきゃいけないから面倒で。とりあえず最低限の物はクローゼットの中に…』
入れてある、と見せたかったのだろうか。
先生が開けたクローゼットの中からバッグや靴下が雪崩れ落ちてきた。
そして最後に下着が落ちて来たとき、先生がその山の上に崩れ落ちた。
「先生、棚買いに行こう。一緒に組み立てるから。」
その光景に笑いが止まらなくなって、もうとことん付き合おうと決める。
『頼むわ。』
弱々しく立ち上がり財布をポケットに突っ込んだ先生が、ふと動きを止める。
まだ笑いが治まらない私の頭にポンと手を置くと、なぜか少し悲しそうに笑った。