ありふれた恋を。
『急いで買ってくるから。待ってて。』
あぁ、そうか…一緒には行けないんだ。
笑いながら、この部屋に合うのはどんな色だろうとか考えてた。
「重いから、気を付けて持って帰って来てくださいね。」
大丈夫、これくらい。
寂しくないと確かめ合ったばかりでしょう。
『うん、行ってくる。』
先生は私の手を1度ぎゅっと握ってから、部屋を出て行った。
気を取り直そうと、小さな物の山を見やる。
とりあえずこれだけでも元に戻しておこうかとクローゼットの中を見ると、その上段にはシワひとつないシャツやジャケットが綺麗にかけられていた。
先生がいつも学校に着て来ている服ばかり…。
その下にはアイロン台とアイロンも仕舞われていて、これだけはちゃんと管理していることを示している。
やっぱり先生としては完璧じゃん。
雪崩れ落ちてきた物たちは、今日私が来る前に慌てて隠したのかもしれない。
そのことを忘れて開けてしまったのは、これが見せたかったからなのかな。
そう思うと、どうしようもなく先生のことが愛おしくなった。