ありふれた恋を。
部屋の中には微かにデュフューザーが稼働する音だけが響いている。
有佐が苦しそうに俺のシャツを握るから、俺は一瞬口を離した後に今度は深く口づける。
困惑したような声を隙間から漏らす度に俺の気持ちは止まらなくなってしまう。
そのまま床に押し倒そうとして、ふと我に返った。
「ごめん。」
1度身体を起こし、目を泳がせている有佐を今度はそっと抱き寄せる。
どこにも行かずいつも俺の帰りを待ってくれている有佐に、本当に俺だけのものだと心の底から分かってほしくて。
でも冷静に考えると有佐はまだ高校生で、俺はその教師で。
いくら恋人同士だとしても、せめて卒業するまではその線を越えてはいけない。
「ごめんな、びっくりさせて。」
何も言わない有佐の髪を撫でると、すがり付くように俺の背中に手を回してきた。
大切だと思うなら、ちゃんと大切にしなきゃいけない。
『私は、先生となら大丈夫なのに。』
「今そんなこと言うな。」
ようやく口を開いたかと思えばそんなことを言われて、封じ込めた気持ちが溢れ出そうになる。